「あきらめていたものを取り戻す!?」 久好圭治さん講演会に89人
4月6日、大阪革新懇主催の久好圭治さんの講演会が大阪市内で開催され89人が参加、定時制高校の科学部活動を通じて“教育とは何か?”“生きるとは何か”を問いかける貴重な企画となりました。昨年10月にNHKドラマ10「宙わたる教室」が放映され話題を呼びました。舞台は東京でしたが、実際には大阪の定時制高校科学部の教師と生徒のドラマでした。モデルとなった久好圭治さんをお招きし、「定時制高校科学部から学ぶ、人間らしい生き方、教育とは」のテーマで講演していただきました。
開会あいさつで桜田照雄阪南大学教授(大阪革新懇代表世話人)は「最近は言葉を覚えることが勉強だと思っている。自分の頭で考えて答えを出す教育を取り戻すことが大事」と指摘しました。
「実験に失敗はない!」 -誰もやったことのないことだから-
久好さんは昼間、大阪大学大学院理学研究科で研究を続けながら、夜は定時制高校で講師を行い科学部顧問として活動を続けています。ドラマ化された本の著者、伊予原新さんが「藍を継ぐ海」で直木賞を受賞し一層注目されました。受賞を祝う会にも出席してきました。さて、科学部を結成したのが2010年で、翌年から日本地球惑星科学連合大会に参加し、微小重力(無重力)装置の開発について発表しました。これが東京大学の橘省吾先生の目に留まり、小惑星探査機「はやぶさ2」の開発に採用されました。しかし、実験の過程では様々な「失敗」や思うような結果が得られないことがしばしばあります。その時私は「実験に失敗はない。誰もこれまでやったことのないことをやっているから!」と励まします。生徒たちはお金がない中でも苦労して装置をつくり実験を繰り返しました。大会でみんなが真剣に聞き、質問を行う中で「人生で初めて大人が真剣に聞いてくれた」と本気度が変わるのがわかります。最近の定時制高校は“やんちゃな子”が少なくなり、小中学校時代に不登校だった子どもたちが多くなっています。その子らが自分で考え、悩みながら活動していく姿には逆に励まされることも多々あります。たぶん私が教えることの100倍ぐらい生徒から教えられる。だから教師を続けられると思う。小学校の時代から、答えを見つけるのではなく、自分で考えて「理解すること」を身に着ける教育が大事です。小学校の環境整備にもっとお金を使うべきです。この春から定時制高校の教師になる方から「心構え」についての質問があり、久好さんは「とにかく仲間を作ってください。一緒に考える先輩を見つけて」くださいとアドバイスしました。
閉会は、おおさか市民ネットワーク代表の藤永延代さん(大阪革新懇代表世話人)。「今日の話を聞いて“お金がないことは素晴らしい”と思った。知恵がわくし頭を使う。今日の感動、疲れないけど力が出る久好さんの話を広げてほしい。ぜひ、地域や職場でこれを企画してほしい」と訴えました。
多くの参加者から「ワクワクしながら聞き、本当の教育とは何かを考えさせられた」「科学の前では人々は平等との言葉がすべての学問にあてはまってほしい」「たまたまドラマを見た。学会発表は演出かと思っていたが実際の話と聞いて驚きました」などの感想が寄せられました。
(「大阪革新懇だより12月号」は久好さんのインタビューです)